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ボーダーレス文化、多文化、文化批評(「新しい世界文学」シリーズなど)


これまで作ってきた、ボーダーレス文化、多文化、文化批評関連の本の一部を紹介します。また「新しい世界文学」シリーズ刊行のさい、『出版ダイジェスト』紙(1997年4月20日、1644号)に書いた気軽な紹介エッセイ(川添裕執筆)を掲載しています。「新しい世界文学」シリーズの作家からは、その後のノーベル文学賞受賞者やニュー・アカデミー文学賞(ノーベル文学賞の代替賞)受賞者がでています。

東と西(新しい世界文学シリーズ)

サルマン・ラシュディ=著
寺門泰彦=訳
平凡社刊
定価:本体1800円
四六判 224頁 1997.4
ISBN4-582-30223-8 C0397 NDC分類番号 933

『東と西』の表紙

いま最も注目すべき作家の最新連作小説。東と西の文化が産みだす悲喜劇を、ときに痛
烈に、ときにユーモアたっぷりに描く。ラシュディらしさが横溢した珠玉の9篇。
[目次]
 東
  よい忠告は宝石よりも稀
  無料のラジオ
  預言者の髪の毛
 西
  ヨリック
  ルビーのスリッパの競売にて
  クリストファー・コロンブスとスペイン女王イサベル、画竜点睛を施す(サンタ・
    フェ 一四九二年)
 東と西
  天球の調和
  チェーホフとズールー
  コーター

サルマン・ラシュディ Salman Rushdie
1947年(インド独立の年)、ボンベイのムスリムの家庭に生まれる。英語とウルドゥ
ー語のバイリンガルとして育つ。ケンブリッジ大学で歴史学を専攻、プロの俳優を目指
すがコピーライターに転向、その後小説の執筆を始め、今日に到る。著書に―
『Grimus』1975、『真夜中の子供たち』1981(寺門泰彦訳、早川書房)、『恥』
1983(栗原行雄訳、早川書房)、『ジャガーの微笑―ニカラグアの旅』1987(飯島み
どり訳、現代企画室)、『悪魔の詩』1988(五十嵐一訳、プロモーションズ・ジャン
ニ/新泉社)、『Haroun and The Sea of Stories』1990、『Imaginary
Homelands』1991 評論集、『The Moor's Last Sigh』1995 など。


トルトゥーガ(新しい世界文学シリーズ)

ルドルフォ・アナーヤ=著
管啓次郎=訳
平凡社刊
定価:本体2980円
四六判 448頁 1997.4
ISBN4-582-30221-1 C0397 NDC分類番号 933

『トルトゥーガ』の表紙

チカーノ文学最大の作家の代表作。舞台は砂漠のなかの重度身体障害児施設。ギャング
抗争で傷つき、四肢が麻痺して「トルトゥーガ」(スペイン語で亀)と呼ばれる少年の
癒しと「再生」の冒険活劇。

ルドルフォ・アナーヤ Rudolfo Anaya
1937年、ニュー・メキシコのパストゥーラに生まれる。ニュー・メキシコ大学英文科
を卒業。最近までの約20年間、母校の創作科で教鞭を執った。先住民文化とパチューコ
世界を扱った一連の自伝的作品で知られる、チカーノ文学の代表的作家。著書に―『ウ
ルティマ、ぼくに大地の教えを』1972(金原瑞人訳、草思社)、『The Heart of
Aztlan』1976『Alburquerque』(1992) など。

 


J. M. クッツェーに2003年ノーベル文学賞!

ペテルブルグの文豪(新しい世界文学シリーズ)

J・M・クッツェー=著
本橋たまき=訳
平凡社刊
定価:本体2400円
四六判 320頁 1997.4
ISBN4-582-30225-4 C0397 NDC分類番号 933

『ペテルブルグの文豪』の表紙

義理の息子が自殺したとの知らせで、急遽、ペテルブルグへと駆けつける作家ドストエ
フスキー。息子の死の謎を追ううちに、創作者としての自分と息子との相克も明らかに
なっていく。

J.M.クッツェー J. M. Coetzee
1940年、南アフリカ共和国ケープタウン生まれ。ケープタウン大学、テキサス大学に
学ぶ。現在、ケープタウン大学で英文学・言語学を教える。大半を英語で、稀にアフリ
カーンス語で執筆。『マイケル・K』(1983)でブッカー賞を受賞。著書に―『ダスク
ランド』1974(赤岩隆訳、スリーエーネットワーク)、『In the Heart of the
Country』1977(村田靖子訳、スリーエーネットワーク近刊予定)、『夷狄を待ちな
がら』1980(土岐恒二訳、集英社『世界の文学20』)、『マイケル・K』1983(くぼ
たのぞみ訳、筑摩書房)、『敵あるいはフォー』1986(本橋哲也訳、白水社)など。

受賞時点で出版社に若干あった在庫は、完売となったようです。


川底に(新しい世界文学シリーズ)

ジャメイカ・キンケイド=著
管啓次郎=訳
平凡社刊
定価:本体1800円
四六判 192頁 1997.4
ISBN4-582-30226-2 C0397 NDC分類番号 933

『川底に』の表紙

いまアメリカで最も活躍する黒人女性作家(カリブのアンティーガ出身)の処女小説
集。母と娘の関係、少女の成長と自我形成、社会的鬱屈など、キンケイドの原点といえ
る物語が力強い言葉で語られる。

ジャメイカ・キンケイド Jamaica Kincaid
1949年、カリブ海の小島、旧英領アンティーガに生まれる。'65年にニューヨークへ
出、ウィリアム・ショーンに見出され'76年より『ニューヨーカー』専属ライターに。
カリブの口語英語によるポスト・コロニアル小説の旗手として、アリス・ウォーカーら
と並んで人気の黒人女性作家である。著書に―『アニー・ジョン』1985(風呂本惇子
訳、學藝書林)、『小さな場所』1988 エッセイ(旦敬介訳、平凡社)、『ルーシ
ー』1990(風呂本惇子訳、學藝書林)、『母の自伝』1996 など。


小さな場所(新しい世界文学シリーズ)

ジャメイカ・キンケイド=著
旦敬介=訳
平凡社刊
定価:本体1600円
四六判 128頁 1997.4
ISBN4-582-30222-X C0398 NDC分類番号 934

『小さな場所』の表紙

カリブの美しき故郷のアンティーガを、ウィットをこめて語る。植民地支配からポスト
コロニアル社会へと移行する小国を、美しく率直な文章で綴った、作家のもう一つの原
点。

ジャメイカ・キンケイド Jamaica Kincaid
1949年、カリブ海の小島、旧英領アンティーガに生まれる。'65年にニューヨークへ
出、ウィリアム・ショーンに見出され'76年より『ニューヨーカー』専属ライターに。
カリブの口語英語によるポスト・コロニアル小説の旗手として、アリス・ウォーカーら
と並んで人気の黒人女性作家である。著書に―『アニー・ジョン』1985(風呂本惇子
訳、學藝書林)、『小さな場所』1988 エッセイ(旦敬介訳、平凡社)、『ルーシ
ー』1990(風呂本惇子訳、學藝書林)、『母の自伝』1996 など。


満たされぬ道 上・下(新しい世界文学シリーズ)

ベン・オクリ=著
金原瑞人=訳
平凡社刊
定価:本体各2800円
四六判 上−448頁、下−400頁 1997.8
上−ISBN4-582-30227-0 C0397 NDC分類番号 933
下−ISBN4-582-30228-9 C0397 NDC分類番号 933

『満たされぬ道 上』の表紙  『満たされぬ道 下』の表紙

1991年・英ブッカー賞受賞作の待望の邦訳。精霊と人間を行きかう少年がみた、愛
の、破天荒なマジックリアリズム小説。「道の王」は満たされない! だから事件は起
きるのだ。

ベン・オクリ Ben Okri
1959年、ナイジェリア生まれ。エセックス大学に学び、19歳のときFlowers and
Shadowsを書き、注目を集める。詩集、短編集、長編などを次々に発表。カズオ・イシ
グロ、マイクル・オンダーチェ、ヴィクラム・セスなどと並び、イギリスを代表するポ
スト・コロニアル文学の旗手として活躍する。本書『満たされぬ道』は、1991年のブ
ッカー賞を受賞、多くの国々で翻訳され評判となった。現在、ロンドン在住。著書に―
『Flowers and Shadows』1980、『The Landscapes Within』1981、『Incidents
at the Shrine』1986、『Stars of the New Curfew』1989、『Songs of
Enchantment』1993、『Astonishing the Gods』1995(青山出版社より金原瑞人訳
で刊行予定)など。


テキサコ 上・下(新しい世界文学シリーズ)

パトリック・シャモワゾー=著
星埜守之=訳
平凡社刊
定価各巻:本体2,400円
*第15回渋沢クローデル賞特別賞
四六判 上-320頁 下-312頁 1997.10
上 ISBN4-582-30229-7 C0397 NDC分類番号953
下 ISBN4-582-30230-7 C0397 NDC分類番号953

『テキサコ 上』の表紙  『テキサコ 下』の表紙

1992年・仏ゴンクール賞受賞作。カリブの都市の貧民窟で、都市計画家と土着の語り
部女性が紡ぎだす、流転の街テキサコの物語。この10年で最も注目すべき作品と評価さ
れたフランス語/クレオール語小説、ついに偉業の邦訳なる。

トリック・シャモワゾー Patrick Chamoiseau
1953年、マルチニックのフォール・ド・フランス生まれ。ラファエル・コンフィアン
らとともにフランス語圏クレオール文学を代表する小説家。『七つの不幸の年代記』
(1986)でデビュー、3作目の本著『テキサコ』(1992)でゴンクール賞を受賞。マ
ルチニックに住んで、保護司の仕事もしている。著書に―『Manman dlo contre la
Carabosse』1981、『Chronique des sept miseres』1986、『Solibo
Magnifique』1988、『Au temps de l'antan』1988、『Martinique』1989、
『Antan d'enfance』1990、『Chemin d'ecole』1994、『Guyane, traces-
memoires du bagne』1994、『L'Esclave viel homme et le molosse』1997、
『Ecrire en pays domine』1997。共著に―『クレオール礼賛』1989(ジャン・ベル
ナベ、ラファエル・コンフィアンと。恒川邦夫訳、平凡社、1997近刊)、『クレオー
ルとは何か』1991(ラファエル・コンフィアンと。西谷修訳、平凡社、1995)など。


クレオール礼賛(新しい世界文学シリーズ)

ベルナベ、シャモワゾー、コンフィアン=著
恒川邦夫=訳
平凡社刊
定価:本体1900円
四六判 160頁 1997.11
ISBN4-582-30231-9 C0398 NDC分類番号 954

『クレオール礼賛』の表紙

新しい「クレオール語/フランス語文学」を代表する3人の作家が、共同執筆し、実際
に読みあげられた、高らかなクレオール性礼賛。多文化混淆の新しい世界システムを指
し示す記念碑的なマニフェストである。

ジャン・ベルナベ Jean Bernabe
1942年、マルチニックのル・ロラン生まれ。言語学者。カリブ海域のクレオール語研
究の第一人者。アンティル=ギアナ大学教授。著書に―『Fondal-natal―Grammaire
basilectale approchee des creoles guadeloupen et martiniquais』1993 など。

パトリック・シャモワゾー Patrick Chamoiseau
1953年、マルチニックのフォール・ド・フランス生まれ。小説家。『七つの不幸の年
代記』(1986)で小説家としてデビュー、3作目の『テキサコ』(1992)でゴンクー
ル賞を受賞。マルチニックに住んで、保護司をしている。著書に―『Chronique des
sept miseres』1986、『Solibo Magnifique』1988、『クレオールとは何か』
1991(ラファエル・コンフィアンとの共著。邦訳、西谷修訳、平凡社、1995)、『テ
キサコ』1992、(邦訳、星埜守之訳、平凡社、1997)など。

ラファエル・コンフィアン Raphael Confiant
1951年、マルチニックのフォール・ド・フランス生まれ。幼年時代をル・ロランで過
ごした。小説家。クレオール語表現の小説を書き、クレオール語運動の強力な推進者と
して出発したが、1988年に初めてフランス語の小説『黒ん坊と提督』を発表、2作目の
『オー・ド・カフェ』でノヴァンブル賞を受賞。マルチニックに住んで、リセで英語、
大学でクレオール文学を教えている。著書に―『Bitako-a』1985、『Kod yanm』
1986、『Marisose』1987、『Le Negre et l'Amiral』1988、『Eau de Cafe』
1991 など。

●今福龍太氏による書評はこちらです。


マリーズ・コンデに2018年ニュー・アカデミー文学賞(ノーベル文学賞の代替賞)!

生命の樹−あるカリブの家系の物語(新しい世界文学シリーズ)

マリーズ・コンデ=著
管啓次郎=訳
平凡社刊
定価:本体3200円
四六判 416頁 1998.5
ISBN4-582-30232-7 NDC分類番号953

『生命の樹』の表紙

1960年パリ生まれの黒人女性ココが、カリブの曾祖父に至る家系を「混血」と躍動の
歴史の中にさぐる。カリブ版「ルーツ」ともいえる大河クレオール小説。1988年アナ
イス・ニン賞受賞作。

マリーズ・コンデ Maryse Conde
1937年、グアドループに生まれる。16歳でグアドループを出たのち、フランス、コー
トジボワール、グニア、ガーナ、セネガル、アメリカの各地で暮らす。1975年、ソル
ボンヌで比較文学博士号を取得。翌年に初の小説『Heremakhonon』を刊行し、以
降、続けて作品を発表、『Segou』二部作がフランスで30万部を超えるベストセラー
となった。『わたしはティチューバ』でフランス女性文学大賞を受賞。本書『生命の
樹』でアナイス・ニン賞を受賞。作家活動のほか、現在はニューヨークのコロンビア大
学でフランス文学、カリブ海文学を教えている。

訳者あとがきを立ち読みできます。
●著者が来日した際、札幌で行われたパネルセッションのまとめはこちらです。


感覚の天使たちへ

今福龍太=著
(今福龍太がカフェマスターのサイト「カフェ・クレオール」)
平凡社刊
定価:本体2330円
四六判 280頁 1990.7
ISBN4-582-30128-2 C0098 NDC分類番号 914

『感覚の天使たちへ』の表紙

知覚の未開への扉をあける〈探知機〉としての天使。自身をそうした存在に変成させる
ことを夢みながら、からだと自然にひそむ原初の感覚への接近遭遇を試みた刺激的エッ
セイ。

[目次]
プロローグ 天使たちは怖れる
I 天使の五感
    風の巡礼(インターネット版が読めます)
    熱帯的シンコペーション
    音のエロス
    虹色の風景のなかで
    感覚の迷宮都市 「ベルリン・天使の詩」
    動物と愛を交わすシャーマン = エコロジスト
    幻獣の国の天使たち
II L'Anti Voyage
    海の種子への旅
    旅の幾何学
    サウスウェスト派宣言
    砂漠のクロニクル 「パリ、テキサス」
    火焔樹の海岸で
III 声のポリフォニー
    修辞学者としてのジャズ・シンガー
    交差する声 「インテルビスタ」
    麒麟のざわめき
    マリノフスキーの風景
    オクタビオ・パスあるいは政治の対位法
IV 内なる異郷
    ロビンソンとムルソーの遭遇
    王権論の南島的景観
    言葉以前へのまなざし


美術という見世物−油絵茶屋の時代(イメージ・リーディング叢書)

木下直之=著
平凡社刊
定価:本体2,621円

*第15回サントリー学芸賞受賞
A5判 296頁 1993.6
ISBN4-582-28471-X C0370 NDC分類番号702

『美術という見世物』の表紙

日本の美術には、西欧の美術史の枠組におさまらない豊かな伝統がある。幕末から明治
へと流動する時代にあらわれた、油絵を見せる茶屋、掛軸になった写真、浅草奥山の生
人形などをとりあげて、日本美術と「美術史」の可能性を根底から問い直した注目作。

[お知らせ]
本書は、ちくま学芸文庫として1999年に再刊されました。
本書はさらに、講談社学術文庫『美術という見世物』として2010年に再刊されました。
→ Amazon- 美術という見世物 (講談社学術文庫版)


明治の迷宮都市−東京・大阪の遊楽空間(イメージ・リーディング叢書)

橋爪紳也=著
平凡社刊
定価:本体2,330円
A5判 208頁 1990.5
ISBN4-582-28465-2 C0052 NDC分類番号521

『明治の迷宮都市』の表紙

近代化の荒波のなかで流動する二つの都市、東京と大阪。その誕生と変転のさまを、博
覧会、見世物小屋、パノラマ、迷路などの遊楽の空間と、墓場という負の空間から解読
する。

[目次]
都市と見世物小屋の近代
死者たちのユーとピア
世俗の塔の誕生
迷路のなかの快楽
パノラマ館考
博覧会という体験
付録 『大阪名所』『東京名勝』

[お知らせ]
本書は増補のうえ、ちくま学芸文庫として2008年に再刊されました。
→ Amazon- 増補 明治の迷宮都市 (ちくま学芸文庫版)


男たらし論

野中邦子・江崎リエ・藤田真利子・実川元子・山本淑子・高岡尚子=著
平凡社刊
定価:本体1,600円
四六判 272頁 1997.12
ISBN4-582-82912-0 C0090 NDC分類番号901.4

『男たらし論』の表紙

女が男にしたがうのでも、敵対するのでもなく、男を「たらせる」ような関係が、自立
した女と男の幸福への第一歩と考える6人の女性たちが、お金やセックスの問題から、
広告や映画に見る男女像、伝記から学べることなど、それぞれに「男たらし」の方法を
語る。

[目次]
はしがき  野中邦子
男を誘う女になろう  江崎リエ
はう・つー・セックス  藤田真利子
女とお金と男の関係  実川元子
誘惑する女たち  山本淑子
「狩り」する女たちの身繕い  高岡尚子
女が生き延びるために  野中邦子


※表示の定価はすべて2004年3月現在の本体価格で、別途、消費税が加算されます。また、定価は変更になる場合があります。
おもとめは、全国の書店、オンライン書店、また古書店へ。